現代では、信号受信が主な技術的課題の1つとして挙げられます。現在、これは通信業者の問題だとほとんどの場合は考えられています。スマートフォンが「信号を受信できない」と警告する場合、ほとんどの場合、セルラー信号が受信できないことを意味します。その原因は恐らく、送信塔から遠く離れた田舎の環境にいるからです。
しかし現在、新たな信号受信の問題が起こりつつあります。田舎ではなく都市部で起こり、ビルが空の大半を覆ってしまう問題です。対象の信号も4Gや5Gではなく、GNSSです。GPS、Galileo、GLONASS、BeiDouなどのグローバルナビゲーション衛星システムを指します。
ビルはGNSSのパフォーマンスを不安定にさせる原因
GNSS信号は視線が確保された時に最高の性能を発揮します。GNSS信号を使用して正確な位置を計算するデバイスはすべて、少なくとも4つの衛星を直接視認できなければならず、その数が多ければ多いほど性能が上がります。
これは、空があまり見えない場所では問題となります。GNSS信号は地上に届く頃には40ワットの電球程度の威力しかないため、ビルを通過できないことがよくあります。軌道衛星は常に移動しているため、信号が頻繁に視野を出入りします。このため、GNSSが安定する時刻を予想するのは困難です。
Buildings can block satellites from view, creating patches of poor GNSS reception
これは、不慣れな都市で、スマートフォンや自動車がGNSS信号をうまく受信できない場合はやっかいですが、通常は問題となりません。しかし、ドローンや自律走行車では話が違います。これらの機器が都市部の道路上、または頭上で安全に稼働するには、どんなときも位置を正確に把握しなければなりません。
衛星が多いほど測位性能が向上
これは、GNSS開発者が長年にわたって取り組んでいる課題であり、次第に成功を納めつつあります。2011年以前、完全に機能して商用化が可能だったGNSSはGPSのみでした。コンステレーションの衛星数はわずか24であり、密集した地域での信号受信がしばしば劣化し、可用性とパフォーマンスが低下していました。
Map of downtown Indianapolis showing areas of poor (red) and very poor (black) signal reception for a GPS-only receiver
グローバル衛星ナビゲーションシステムが追加されたことで、重要な改善の一歩が踏み出されました。ロシアの一新されたGLONASSが2011年に世界中で稼働を開始し、2016年には欧州のGalileo、2018年には中国のBeiDouが稼働しています。
チップセットの開発者も、そうした新しいシステムのいずれかとGPSの両方から信号を処理できる、新しいマルチGNSSレシーバーを素早く発表しました。さらに多数の衛星が地球を周回しており、マルチGNSSレシーバーは、空があまり見えない密集地域ですら、4つ以上の衛星を視線でとらえる可能性が非常に高まっています。
The same area of downtown Indianapolis, showing greatly improved reception quality for a receiver capable of processing signals from GPS, GLONASS, Galileo and BeiDou.
しかし、マルチコンステレーションのGNSSレシーバーは都市部と郊外の環境で信号受信を改善したとしても、視野内の衛星数が不足しがちで、正確に測位できないことのある地域があります。
RTKは精度を高めるが、GNSS信号が劣る場所ではまだ不十分
頻繁に検討されるソリューションは、リアルタイムキネマティック(RTK)です。RTKの地上局はGNSS信号の気中遅延を地域ごとに測定し、遅延を解消するためにGNSSレシーバーへ補正信号を送信します。このため、GNSS測位ソリューションはセンチメートル単位の精度を得られます。
正確な測位の点では、RTKは強力なGNSS拡張テクニックです。しかし、この精度を達成するには、RTKもまた、4つ以上のGNSS信号を視線内に捉える必要があります。このため、多くの場所で活躍できる一方、都市部での可用性の問題は解決できません。
都市部の測位で「最後の難関」は、GNSSがいつどこで受信できるかを知ること
これは「最後の難関」の類の問題です。今日のGNSSレシーバーは、ほぼどんな状況でも安全かつ正確にナビゲートできます。高度なテストラボで開発を加速し、開発者とユーザーが、レシーバーが稼働できる信号条件を詳しく理解できるようにしています。
しかし、信号の信頼性が失われる点まで信号条件が劣化するのはいつ、どこなのか特定することはラボでテストできません。さらに重要なことに、おそらく、GNSS機器が高精度を維持する時間と場所を、高い確率で示すことができません。
これにはある種のマップが必要ですが、GNSS信号のパターンは常に変化するため、午後3時にGNSS信号が劣化する街角は、わずか10分後には完璧にナビゲートできることもあります。このため、静的マップは不正確で、不明瞭です。必要なのは、代替の経路を通じて変化するパターンを正確に予測可能な動的マップです。これがあれば、車両やその操作者が、状況に合わせて判断できるようになります。
様々な高度での受信パターンを理解
無人飛行機(ドローン)では、そうしたマップで高度も考慮する必要があります。ドローンが高く飛ぶほど、4つ以上の衛星を視線に捉える可能性が高まり、信号喪失の可能性が大きく減ります。しかし、これはエネルギー消費の増加や、ドローンの積載重量の減少との兼ね合いとなります。高高度は、エアタクシーや有人飛行機など、他の空中ユーザー向けに予約されていることもあります。
現実的には、配送や救難対応などに使用されるドローンは、すべて都市部の範囲内で、離陸、比較的低い高度での飛行、着陸をこなす必要があります。このため、様々な高度での信号受信の問題を理解して予測することが必須です。
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世界は車両が真に自律運行する環境へ移行しており、密集地域でのGNSSパフォーマンスの保証は、PNTで解決しなければならない最後の難関の一つとなっています。これはまた、解決できない場合、視線を超えて稼働する自律走行車やドローンの規制認可や認証への道のりを妨げる可能性があります。