5Gはこれまでのワイヤレスネットワークテクノロジーのどれよりも素早く進化を遂げており、独自の魅力的な機能を備えつつあります。非常に高速な接続、超低レイテンシ、大量の人々/機械/デバイスを接続する容量を約束する5Gは、国内のみならず世界中で商業分野で注目を集めています。
政府機構もまた、5Gに乗り遅れまいとしています。交通システムと農業システムの遠隔監視から、軍隊の最前線で不可欠な医療措置と過酷な環境における通信システムの柔軟性と耐久性にいたるまで、5Gは任務を完全に成功させるための最先端テクノロジーの可能性を開いています。5Gの採用に関して、政府はどんな課題に直面しているのでしょうか? 任務の成果を最大限に上げるために、5Gのコアとエッジネットワークをどう整備すればいいのでしょう?
政府機構が5Gを採用する際の課題
政府機構はこれまで、革新的なテクノロジーを発展させ価値を実証させるうえで、民間組織の先例に習ってきました。しかし、5Gの威力は現在進行形で継続的に発展しており、ネットワーク形成でこれまでの常識をくつがえすことが見込まれているため、政府機構は早期の採用を試みています。その一例として、政府機構が5GとOpen RANを優先的に注目していることが挙げられます。
5Gは主に、汎用の商業利用向けに設計されています。政府機構と防衛機構は当然のごとく、民間組織の必要性を上回るパフォーマンス、回復性、セキュリティの要件を携えています。肝心な問題は、5Gは政府'の特殊な要件へ問題なく適用できるのだろうか?です。例えば、5Gは停止が絶対に許されない国防ネットワークへの攻撃に耐えられるほど柔軟なのでしょうか? 5Gを民間ネットワークと国防ネットワークへ統合するはるか以前に、政府はこのテクノロジーが、非常に厳しく過酷な現場の環境で意図したとおりに動作するのか、確証を得なければなりません。
5Gを民間ネットワークと国防ネットワークへ統合するはるか以前に、政府はこのテクノロジーが、非常に厳しく過酷な現場の環境で意図したとおりに動作するのか、確証を得なければなりません。
そのための方法は、正しい戦略、正しいテクノロジー体制、正しい人材を用意してテストすることです。最新の試験手法を用いて膨大なユースケースにまたがりネットワークとデバイスをテストすることで、政府や民間の組織は実世界の条件に合わせて問題を発見し、5Gネットワークのパフォーマンスを適用させて改良できます。5Gテクノロジーの先進性と、総合的で包括的な手法が絶対的に必要とされている現実があるため、試験戦略を自作すると時間と費用が膨大になり、それでも必要な成果が得られるとは限りません。
デジタルツインを活用する方法
5Gネットワークのデジタルツインは、ネットワーク機能とトラフィックをエミュレートして、組織の試験能力を強化して拡張できるソリューションの一例です。実世界のネットワークと通信ネットワークの2種類を混成させたデジタルツインは、実世界の環境で予想される過酷な状況でテクノロジーとサービスのパフォーマンス、回復力、セキュリティをテストできます。
政府機構が経験豊富なデジタルツインのエキスパートを試験パートナーに迎えることで、連邦政府の民間組織および国防組織が独自にユースケースを作成してテストできるようにし、実環境で起こり得る状況や条件に合わせてテストできるようになります。ユースケースは数百万ものエンドユーザーを想定する場合があり、デジタルツインは合成トラフィック、サイバー攻撃、不慮の停電、ノイズ干渉、利用量の急増などを人工的に生成してネットワークで障害を演出できます。デジタルツインはまた、試験ネットワークと実ネットワークを統合することで、試験条件での実ネットワークの挙動をより把握しやすくします。
デジタルツインは、従来の実世界試験よりも費用と時間を大きく削減して、必要な5Gネットワークのパフォーマンス検証を行えます。この手法により、5Gネットワークを稼働環境で有効にするはるか以前に、脆弱性を特定して問題を解決しやすくなります。
Digital Twin applications for assuring the Tactical Edge
政府機構による5Gのコアとエッジネットワーク試験の3つのユースケース
デジタルツインはネットワークが非常に柔軟に広範なユースケースに対応できるようにします。これには、必須の通信システムを素早く、安定して、最高の品質で提供しなければならない場合が含まれます。こうしたユースケースには次の例が挙げられます。
1. セキュアな緊急通信ネットワークのスライスパフォーマンス
ネットワークスライシングは、機密または機密外の通信など、任務遂行用の特殊な必要性に適した、複数の異なるセキュリティとパフォーマンスの特性をネットワークへ実装する新しい方法です。
デジタルツインは、コアと転送ネットワークの高度なネットワークスライス試験をサポートします。各スライスはセキュアで隔離された専用の設定を持つことができ、独自のパフォーマンス試験能力と使用要件を与えられます。セキュアな緊急通信ネットワークスライスには、例えば密度が高くリソースの限られる環境で他の通信よりも高い回復力、信頼性、優先度が必要とされます。
デジタルツインはそのようなスライスを、同時に稼働する他のスライスと共にテストして、セキュアで優先度の高い通信を提供するために指定された要件を満たせるようにします。テストの一環として、デジタルツインはシステムの混雑度を再現する不具合を導入することで、スライスが障害のある環境でも必須のパフォーマンス要件を満たせるよう保証します。
2. 様々な機密レベルとユースケース要件に合わせて優先度とパフォーマンスをテストするための、複数のネットワークスライス
デジタルツインは複数のネットワークスライスを同時にテストでき、複数のスライスにまたがって多数の異なるユースケース要件をテストしやすくします。例えば、コアネットワークは遠隔操作での治療をサポートする遠隔医療用のスライスを備えることがあります。他にも、戦場のドローンがリアルタイムに視覚的に諜報活動を行い情報を収集できるようにすることが挙げられます。どちらのユースケースも、安定して瞬時に接続し高解像度で画像処理を行う必要があるため、こうしたスライスでは非常に信頼性の高い低レイテンシ通信(URLLC)が優先されます。
基地で拡張現実(AR)訓練を行うチームでは、この5Gネットワークスライスを、複数のオンラインデバイスが原因で非常に接続密度の高い大規模なマシンタイプ通信(mMTC)に対応できるよう設定できます。AR訓練は重要ですが、それに必要なネットワークスライスは、同じネットワークに存在する人命救助や人命維持用のスライスよりも優先されていないことがあります。
デジタルツインのチームは複数のスライスを定義し、プロトタイプを作成してテストしやすくします。また、多数のスライスが同じ環境で同時に稼働する場合に、それぞれの優先度を設定できます。
3. 低レイテンシアプリケーション用のマルチアクセス型エッジコンピューティング(MEC)におけるエッジ分散コアネットワークのパフォーマンスと回復力試験
5Gの主な特徴に低レイテンシがあります。これは、ある事象とそれに関わる通信転送の往復時間にかかる遅延を短縮できることを意味します。レイテンシは距離によって左右されます。事象を通信するメッセージやデータ受信者との距離が近いほど、メッセージの送信時間が短くなります。
デジタルツインは、映像を大量に転送する自律走行車や路上ドローンなどの状況で、距離を最も縮める方法を提供します。デジタルツインを用いて試験すると、「エッジに必要な能力とは何だろう?」 「稼働要件を満たす範囲で、どれをどこまで遠ざけることができるだろう?」などの疑問に答えやすくなります。世界中の政府機構の中で、米国政府が5Gの採用で先頭を走っています。他の政府は、自国の活動と戦略を見守り、情報を蓄積しています。米国内外で政府機構や他の勧告団体に対してベンダーの立場を離れて中立にアドバイスを送る立場として、Spirentは5Gのグローバルロードマップへ戦略的コンサルティングを提供し、主要な開発動向を追跡しています。デジタルツインを使用して、当社は政府と緊密に協力し、5Gのコアとエッジネットワークのテクノロジーを最適化することで、初期投資のリスクを軽減します。
政府機構で起こりつつある5Gのトレンド
5Gをめぐる政府機構との協力を通じて、当社は2つのトレンドを発見しました。
まず、5Gの持つ可能性が、特に国防分野で、政府機構のイノベーションを加速させています。政府当局と防衛機構はコアとエッジネットワークをテストする早期の段階にあり、戦場の内外で未来の先端ソリューションを実験し、調整し、定義しています。そのため、政府機構は5Gの動向の先を行き、遅れないようにする高い意欲を保っています。
次に、当社は政府機構と民間組織の内外でこれまでになかった協力体制を目の当たりにしています。組織内の枠を打ち破り、複数の組織が参加して協力する環境が出来上がりつつあります。5Gはすでに、ネットワークの能力を全く新たなレベルへ引き上げる約束を果たしつつあります。それだけではありません。正しい試験戦略を備え、適切な試験パートナーと技術を揃えることで、5Gに寄せられる画期的な期待は、民間組織と防衛機構両方の環境で最高の任務遂行を実現するはずです。
Spirentが政府機構に提供するソリューションの詳細をご覧ください。