IT管理者にとって、タイミングと同期が最優先事項と化しました。標準の取引や高頻度の取引のいずれも、同じ厳格な基準を課せられます。
欧州連合と欧州証券市場監督機構(ESMA)は、取引会場とその会員および関連の参加者すべてに適用される業務のクロックタイミングと同期の要件を含む、MiFID II規格を発行しました。その他の地域での要求はそれほど厳しくないことがありますが、金融機関は世界共通で最も高度な要件を満足させようとしており、これは世界的な課題となりつつあります。
では、正確なタイミングで取引を処理し、より大胆な基準を満足させるため、IT部門はどんな戦略を採用しているのでしょうか?
MiFID IIタイミング要件の満足
MiFID II規制は、取引会場ではクロックをUTCの100ミリ秒以内で同期させ、1ミリ秒刻みのタイムスタンプを持つことを要求しています。
データセンター内のネットワークタイマープロトコル(NTP)同期されたクロックはミリ秒単位の精度を持ちますが、新たな規格では、高精度時間プロトコル(PTP)の正確な時間同期機能を要求しています。これは、MiFID IIの準拠に十分なUTCからの最大100マイクロ秒の逸脱よりも、格段に高い精度を誇ります。
規格では、ネットワークが同期エラーを最小限にとどめるよう設計されることを要求しています。これは、関連するデバイスすべてでエラー範囲を割り当てる、エラー予算を作成することで、ある程度対処できます。もちろん、デバイスが増えるほど、エラー源も増加します。
Meta(旧Facebook)は最近、オープンソースとして、オープンコンピュートプロジェクト(OCP)とタイムアプライアンスプロジェクト(TAP)の一部として、PTP同期タイムカードを利用可能にしました。このプロジェクトを通じて、同社はマイクロ秒単位の精度を持つPTP同期を可能にするため、ハードウェアのタイムスタンプを使用し、汎用性が高く、低価格なエンジンを開発しています。タイムカードは、市販される参照クロックのコストやその他の欠点のほとんどを解消できます。
タイムカードなどの新テクノロジーを使用してネットワークを適切に設計すれば、オペレーターはMiFID II要求を低予算で満たせます。準拠維持を適切に監視して検証することも不可欠です。
準拠性を監視して検証する手法
モバイルネットワークでは、タイミングの不正確さと準拠違反は、ネットワーク障害やパフォーマンスの劣化を招き、警告が発せられます。しかし、金融ネットワークでは、同じ問題が恐らく発見されないまま放置されます。このため、何も見逃さないよう、監査と検証の計画を立てる必要があります。ここでは、マイクロ秒単位の精度を検証するためのテストが不可欠です。
MiFID規格は多数のガイダンスを提供しますが、取引会場がどのようにタイミング精度をテストして検証するべきかの解釈には多少の余地があります。毎年のテストは最低条件です。しかし、業界のベストプラクティスは、定期的、さらには連続したモニタリングとクロック精度のアーカイブ化が役に立つことを示唆しています。このアーカイブデータは、政府による監査の際などで、以前の事象で準拠が保たれていたことを証明するために、非常に有効です。
以下、一般的な検証手法を紹介します。
定期的なテスト:ネットワーク全体を通じて、特定の場所で定期的にタイミング精度テストが実施されます。タイミング精度はネットワークでの活動に影響を受けるため、こうしたテストはトラフィック量が大きく増減する期間を捉える必要があります。
継続的なモニタリング:継続的に測定することで、過去にさかのぼって各種条件を確認できます。これで、トラフィックが異常に高まる状況でのパフォーマンスを審査し、問題解決や監査を支援できます。ストレステスト:タイミング精度はネットワーク負荷に影響を受けるため、トラフィックをエミュレートしてネットワークをストレステストにかけることで、最悪の状況に関するより詳しい知見が得られます。
MiFID II要求が厳しく、多くの技術的問題やトラフィックの問題でタイミングが影響を受けるため、明確に定義されて実施された同期テストプランが必須となります。
MiFID IIのタイミングと同期の要件を詳しく見てみましょう
MiFID II規格を満足させるための要件、タイミングエラーの可能性、テスト手法をより詳しく解説するSpirentのテクノロジー記事を読み、取引会場でのタイミングと同期について詳しくご理解いただけます。